記載内容を間違うと何度も訂正する羽目になる処遇改善実績報告。注意すべき点は?

 こんにちは! 北日本ケアサポートです。

 今回は、介護職員処遇改善加算の算定に関わる『 処遇改善実績報告 』の書き方について説明いたします。

 処遇改善加算については、昨年度から何度も制度変更がありました。また、令和5317日にも厚労省から令和4年度の実績報告書に関する通知が出ています。
「介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和4年度分)」の一部改正について

 処遇改善実績報告書を提出期限ギリギリで作成しようとすると、必要書類がそろわず、提出ができない……なんてことになりかねません。そうなると、処遇改善加算が算定できないのはお分かりですよね? そのため、早めの準備が必要です。

スケジュール

 

・処遇改善実績報告書に関するスケジュール

『 処遇改善実績報告書 』は、前年4月から今年3月までの実績(加算取得額と賃金)を都道府県等へ報告します。
 つまり、前年に提出した『 処遇改善計画書 』に対し、その期間、実際にどのような処遇改善を行ったか、を報告するようなイメージです。

 処遇改善実績報告書の提出期限は、各事業年度における最終の加算の支払いがあった翌々月の月末までです。

) 処遇改善加算を算定する最後のサービス提供が3月の場合
①事業所から国保連へ請求する月は4
②国保連からの入金は5
→よって、実績報告書の提出期限は、国保連から入金があった2カ月後の7月末となる

 *厚生労働省:『介護保険最新情報Vol.136』 4実績報告書等の作成参照

 介護職員処遇改善加算を算定するには、処遇改善計画書と処遇改善実績報告書の両方の提出が必要です。
 提出方法は、電子書類をアップロードする、メールや郵送、直接持参するなど自治によって異なります。必ず、提出先の自治体のホームページを確認してください。
 また処遇改善実績報告書は、計画書の提出先と同じ場所です。

青のチェック


・事前に準備すべき書類は?

 そもそも、介護職員処遇改善加算は「介護職員の安定的な処遇改善を図るための整備環境とともに、介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設された加算」です。厚労省のリーフレットより

 このことから処遇改善実績報告書は、処遇改善加算が目的通りに使われたかを厳格にチェックされます。
 そのため、以下の3点を事前に準備しておいてください。

① 賃金台帳
② 処遇改善加算等総額のお知らせ
③ 昨年度に作成した処遇改善計画書

 ①と②については、もう少し詳しくご説明しますね。

賃金台帳(前年度の5月支払い分〜今年度の5月支払い分)

 基本的に、前年4月から翌年3月までに介護職員が働いた分の賃金内容が必要です。

 賃金の支払い方法として、末締め翌25日支払いというケースが多いかと思います。この場合は、前年度の5月支払い分から今年度の5月支払い分までの賃金台帳が必要です。
 なぜ13カ月分の賃金台帳が必要かというと、3月サービス提供分の国保連からの入金5月となり、3月分の賃金の支払いタイムラグがあるからです。

 処遇改善加算は、もらった額より1円でも多く支払わなければなりません
 介護職員が退職したり、介護サービスの利用者が増えたりして加算分の調整が必要になった場合は、3月分の賃金に一時金を加えます
 この3月分の一時金を、帳簿上で5月に処理する場合には『5月支払い分の賃金台帳まで必要』となるのです。
*帳簿上の処理は事業所ごとで異なると思います。そのため、必ずしも5月支払い分までが必要ではありません

処遇改善加算等総額のお知らせ

 毎月、国保連からの入金を知らせる通知書と一緒に、介護職員処遇改善加算の総額の通知書も送られてきているはずです。
 この書類を、前年の4月サービス提供分から翌年3月サービス提供分の12カ月分を集めておく必要があります。

 自治体は、事業所へ通知した加算の総額を根拠として、処遇改善実績報告書の内容を確認します。そこで1円でも差異があれば、事業所に「金額が違いますので修正してください」と電話が来ますので、ご注意くださいね。

 ちなみに――以前、弊社のクライアントから以下のような質問をいただきました。

処遇改善加算の総額の通知書に書かれている金額は、利用者が支払った処遇改善加算も入っているのか?

 つまり……処遇改善加算を算定したときの内訳は、原則、9割が国保連への請求で、残りの1割は利用者への請求です。通知書には、その利用者の1割負担分が処遇改善加算の総額に入っているのか? という質問でした。

 私は今までそのようなことを考えたこともなく、その時は即答できませんでした。
 あとで調べてみると、処遇改善加算の総額の通知書に記載されている金額には、利用者負担分(1割)も含まれていることが分かりました。
 国保連からの入金を知らせる通知書と同封されてくる書類なので、処遇改善加算の総額通知も入金合計額の内訳と解釈してしまいそうですが、そうではないということです。

注意喚起とビジネスマン

・意外な落とし穴「基準額」とは?

 処遇改善実績報告書の入力方法については、さまざまなところにヒントがあるので、今回は言及しません。ただ1点だけ『 基準額 』という言葉の意味について解説いたします。

 私が処遇改善実績報告書を初めて作成した際、『 基準額 』という意味が分かりませんでした。
 実際に入力するExcelシートの欄外には、実績報告書の基準額には、計画書の基準額を記載する旨が書かれています。
 そして、この後半の文章には「職員構成が変わった等の事由により修正することが可能である」と、補足のように書かれています。

処遇改善実績報告書の記入例

厚生労働省:実績報告書記入例(令和4年度)より

 実は、この後半の文章がくせ者でして💦「可能である」と書いてあるので、基本的には計画書の基準額を記載すれば良いのだろうと思ってしまいます。
 しかし計画書の基準額をそのまま記載して提出すると、後日、自治体から訂正するように連絡が来ます

 なぜ、このような事態になるのでしょう? 理由は簡単。

処遇改善計画書に記入した年間の賃金予定額と、実際に支払った賃金総額がぴったり合うことがほぼないから

 介護業界は職員の出入りが激しい業界です。入退社の予測やアルバイトの勤務時間を、計画書の段階で正確に予測できる。そんなことは不可能に近いのではないでしょうか?
 むしろ「職員構成が変わった等の事由により修正すること」のほうが普通です。

 上記でお伝えした、事前に準備する書類に『 賃金台帳 』があることも納得ですよね。
 また、処遇改善実績報告書の基準額が計画書と異なる理由(「人員構成の変動によって賃金額が変動したため」など)を、報告書の⑦その他の欄に記入することもお忘れなく!

 通常の処遇改善加算の報告書については、厚生労働省が配布しているExcelシートにも何を入力すればよいかの説明が載っています。入力内容も、それほど難しいわけではありません。しかし言葉の意味や説明文が理解できないと、一気に難しく感じてしまいます。
 そして時間をかけて作成した処遇改善実績報告書を提出しても、記載内容に間違いがあれば、自治体から訂正を何度も求められてしまいます。

 もしも処遇改善実績報告書などについてお困りのことがあれば、弊社北日本ケアサポートまでご相談ください!
 北日本ケアサポートでは、介護保険(介護報酬)の請求事務代行のほかに、事業所が作成する処遇改善計画書や処遇改善実績報告書を代行で作成、事務コンサルティングなども承っております。ぜひ、気軽にご連絡いただければと思います。

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《 記事原案者 》
鷲尾 和巳鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶
北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者

《 記事加筆編集者 》
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介護事務管理士 資格保持者