介護職員処遇改善加算を事業所が取得は難しい? 具体的な運用方法は? そんな疑問に、北日本ケアサポートがお答えします!
こんにちは! 北日本ケアサポートです。
介護保険(介護報酬)の請求業務の代行をしている弊社ですが、毎年のように『処遇改善加算』のご質問をいただきます。
インターネットで処遇改善加算について検索しても、なかなか理解しづらく、具体的な運用についての説明も少ないですよね。
そこで今回は、介護事業所の皆様からいただいたご質問で、特に多かったものについてQ&A形式でお答えします。ご参考になれば幸いです。
Q:そもそも『 介護職員処遇改善加算 』とは?
『介護職員の安定な処遇改善を図るための環境整備とともに、介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設された加算です』*厚生労働省のリーフレットより
つまり、処遇改善加算を算定できると、その分だけ介護職員の方の賃金UPができるということです。
過去にご紹介した記事でも何度か話題にしておりますが、介護職員は離職率が高く「売り手市場」です。そのため、介護職員が労働条件の良い介護事業所へ転職するのことも、とても容易なのです。
介護職員の離職を防ぐためにも、『介護職員処遇改善加算』ことは算定できるようにしておきたいですね。
ちなみに……厚労省のリーフレットでは具体的な金額が記載されていますが、実際は、ひと月の総単位数に処遇改善加算の加算率(パーセンテージ)を掛けて算定します。
《 介護職員処遇改善加算の算定方法 》
例)介護職員処遇改善加算Ⅰの単位数を出す場合 *2021年度の単位数
計算条件:認知症対応型共同生活介護(グループホーム)/要介護3/ 利用日数17日(外泊14日) | |
サービス内容 |
認知症共同生活介護Ⅱ3=13,787単位 |
認知症対応型医療連携体制加算Ⅰ=663単位 | |
認知症対応サービス提供体制加算Ⅲ=102単位 | |
認知症対応口腔衛生管理体制加算=30単位 | |
認知症対応型科学的介護推進体制加算=40単位 |
①上記の総単位数を出す
13,787+663+102+30+40=14,622単位
②介護職員処遇改善加算Ⅰの単位数を計算する *認知症対応型共同生活介護の加算率=11.1%
14,622単位×11.1%=1623.042 ⇒ 1,623単位 (四捨五入) ←これが処遇改善加算の単位数です
Q:処遇改善加算は、許認可申請(指定申請)と同時に取得できる?
A:取得は可能です
ただし、許認可申請の書類と処遇改善計画書の両方を、同時に提出する必要があります。
もし要件さえ満たしていれば、さらに、特定処遇改善加算・処遇改善臨時特定交付金も同時に申請が可能です。
*処遇改善臨時特定交付金については、2022年10月から新たな処遇改善加算が検討されています
もし後から各種の加算を取得しようと考えているのであれば、最初から該当の計画書を作成したほうが良いかもしれません。
Q:処遇改善加算は、どのような書類を作成する必要がある?
A:『 処遇改善計画書 』と『 処遇改善実績報告書 』を作成する必要があります
通常は、2月末までに『処遇改善計画書』を、7月末までに『処遇改善実績報告書』を、都道府県または市区町村等の指定権者へ提出します。
*2022年は新たな交付金などがあったため、処遇改善計画書の提出期限が4月15日となりました
2月に提出する『処遇改善計画書』は、その年の4月から翌年3月までの計画書です。
また、7月に提出する『処遇改善実績報告書』は、前年の4月からその年の3月までの実績(加算取得額と賃金)を報告します。
厚生労働省のサイト『介護職員改善加算・介護職員等特定処遇改善加算に関する通知』に書類のひな形がありますので、その様式を使って提出します。
Q:処遇改善加算の計画書を提出すると、いつから算定が可能?
A:前月15日までに『処遇改善計画書』を提出すると、その翌月には算定が可能です
ほかの加算と同様に、算定したい月の前月15日が書類の提出期限です。
ただし『処遇改善計画書』は、処遇改善加算の算定により賃金改善を行った場合の年間の見込額を記載しなければいけません。
*厚生労働省のサイトで配布されているExcelのひな形に必要事項を入力すれば、自動計算されます
何か不明な点がございましたら、北日本ケアサポートまでご相談ください お問合せ窓口 → こちら
これは私の主観ですが、処遇改善加算は補助金という要素が強いのではないかと思うのです。
国の補助金や助成金を取得した経験のある事業所でしたら、お分かりになるのではないでしょうか? 補助金等の申請には、必ずと言ってよいほど、計画書の提出+その計画を実行した結果の実績報告書の提出が必要ですよね。
処遇改善加算は、平成23年度までに実施されていた『福祉・介護人材の処遇改善事業における助成金』から移行して創設されたものです。
このような背景があるため、助成金という意味合いが強い加算ではないかと思います。
Q:処遇改善加算で取得したお金は、給与以外に使える?
A:原則、給与として全額を支払う必要があります
ですが給与が増額すると、社会保険等の法定福利費等も増え、事業所の負担も多くなります。
処遇改善加算は、法定福利費等の事業所の負担分も加算の配分として含められます。
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*処遇改善実績報告書より(処遇改善計画書にも同様の記述あり) |
このように、処遇改善加算分以上の金額を、事業所側が負担する必要はありません。
ただし、処遇改善加算で取得した金額は、1円も残さず支払わなければならないことは覚えておいてくださいね。
Q:『処遇改善計画』の数字は、どのように計算すれば良い?
A:私が作成する場合は、直近の『 介護報酬総単位数 』を1年分に換算して計算します
事業所によって個々の考え方がありますので、これは、あくまでも私がいつも作成するときの計算方法であることをご承知おきください。
作成に際しては、厚生労働省のサイトで配布されているExcelのひな形を利用します。
1)処遇改善計画書作成用の基本情報入力シート
①の部分に、直近1カ月あたりの介護報酬総単位数を入力します。
②の部分は地域区分単価のことです。
*例えば「札幌市(7級地)の訪問介護」であれば、10.21と入力します
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2)別紙様式2-2 個表
基本情報入力シートへ各項目を入力すると、個表にそれらの情報が反映されます。
(1)介護処遇改善加算の項目の色付き部分に必要な情報を入力、または選択すると、③が自動計算で算出されます。
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3)別紙様式2-1計画書 総括表
個表の③で算出された『介護職員処遇改善加算の見込額』は、総括表の③の部分に反映されます。
あとは、賃金改善の見込額の色付き部分を入力していけばOKです。
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時折、キッチリと数字を出さなければならないと考える方もいらっしゃいます。ですが、これはあくまでも『計画』です。将来のことなので、実際は計画通りにいかないこが多々あります。
難しく考えず、数字の算出方法だけを決め、その通りに計算して計画書を作成してみましょう。
私の経験上「計画書の数字が違う」と、あとから役所に指摘されたことはありません。
ただし『処遇改善実績報告書』は、実績(加算取得と賃金)を報告します。
この報告書は、賃金台帳や加算取得額が分かる書類を用意したうえで、1円の相違もなく記載しなければなりません。
Q:処遇改善加算の配分方法は、基本給をアップさせる形でも良い?
A:問題はありませんが、後々で面倒になることも……
『処遇改善実績報告書』を作成する際、以下の内容を報告する必要があります。
1)処遇改善加算の総額
2)賃金改善所要額
= 本年度の賃金総額(特定加算や補助金による賃金改善総額を除く)-前年度の賃金総額
このことから、基本給をアップさせる形にすると「基本給のうち、処遇改善加算によって昇給した金額はいくらか?」「定期昇給はいくらなのか?」が、賃金台帳を確認しただけでは分かりづらくなってしまいます。
そのため事業所の運用としては、基本給と処遇改善加算を分けておくと処遇改善実績報告書の作成が楽だと思います。
毎月、処遇改善加算を固定的に支払うことに問題はありませんので、『処遇改善加算手当』などの名称で分かりやすく配分すると良いでしょう。
Q:処遇改善加算の配分方法が未確定の場合、計画書にどう記載すれば良い?
A:ひとまず、賃金改善を行う給与の種類すべてにチェックを入れても、問題ありません
『処遇改善計画書』には、賃金改善を行う賃金項目および方法の項目があります。
必ず記載する必要はありますが、まだ決定していない場合もありますよね。その際は、考えられる方法すべてにチェックを入れておくと良いでしょう。
その後、チェックした方法のどれかで処遇改善加算の配分をすれば、何ら問題はありません。
以前は、各自治体で処遇改善にかかわる書類が異なり、しかも毎年のように様式が変更されました。そのため、内容の理解と書類作成に大変な時間を取られていました。
現在は、処遇改善加算・特定処遇改善加算の書類が1つとなり、厚生労働省のサイト内にExcel形式で様式が配られています。
必要な項目を入力すれば、ほかのシートへ反映され、自動計算もされる仕様です。それにより『処遇改善計画書』も『処遇改善実績報告書』も、かなり作成しやすくなったと思います。
ですが、処遇改善の書類に関して理解しがたい部分は、どうしても出てきますよね……。
もし、書類の書き方などが分からず、処遇改善加算の取得を諦めようと考えるのでしたら、その前に弊社北日本ケアサポートまでご相談ください!
北日本ケアサポートでは、介護保険(介護報酬)の請求業務代行のほかに、事業所が作成する介護職員処遇改善計画書と介護職員処遇改善実績報告書を代行で作成ことなども承っております。ぜひ、お気軽にご連絡いただければと思います。
《 記事原案者 》鷲尾 和巳(わしお かずみ)
北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者
《 記事加筆編集者 》北日本ケアサポートスタッフ:A
介護事務管理士 資格保持者