就労継続支援A型の事業所を実際に経営し、難しいと感じたポイントを解説

 こんにちは! 北日本ケアサポートです。

 私、鷲尾が代表を務める法人では、就労継続支援A型を1年半ほど経営していました。しかし事業の継続が難しくなり、残念ながら就労継続支援A型を閉所し、B型に1本化することにしました。
 そこで今回は、私が就労継続支援A型を経営した経験から難しいと感じたポイントなどをご紹介します。
 このポイントをクリアできれば、就労継続支援A型の事業所の運営も可能かもしれません。
*本記事内では「障害」の文字が混在しますが、法令または行政サイトの表記をそのまま使っております

・就労継続支援A型とは?

 一般企業などでの就労が困難な人を雇用し、就労の機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練を行う障害福祉サービスが、就労継続支援Aです。

 似たような障害福祉サービスで、就労継続支援B型があります。そのサービスとの決定的な違いは、事業所と利用者が雇用契約を結ぶか否かです。
 さらに詳細な違いは、以前ご紹介した『 障害福祉サービス『就労継続支援 A型』『就労継続支援B型』の違いとは? 』をお読みください。

 就労継続支援A型の具体的な運営方法は、以下のようなイメージです。

事業所の売上げは、スタッフと障がいを持っている利用者とで作る
一般の事業で得た利益=利用者の給与
利用者が仕事をするために通所した分=国保連からの入金=スタッフの人件費・固定費の支払い

 私が代表を務める法人では、事務作業の代行やデザイン、WEB関係の請負をしていました。
 このような仕事は一般企業も行っていますし、自分がA型を開業しても運営していけそうだなと思いましたか?
 ではなぜ、就労継続支援A型の運営が難しいと私が感じたのか、これからご説明していきますね。

ビジネスマンとポイント

・就労継続支援A型の運営で難しいポイントは?

サービス管理責任者の採用が困難

 就労支援を運営するうえで、常勤が必須となるのが『 サービス管理責任者(=サビ管) です。

 利用者定員が60名までであれば、サービス管理責任者1名の常勤で問題はありません。
 しかし、このサービス管理責任者の資格を持った人が少ない、という現状があります。そのうえ、2022年から資格取得要件が厳しくなったため、ますます人材が不足しています。
 また、新規の就労継続支援やグループホームが増えていることも、人材不足の要因かもしれません。

 さらに、サービス管理責任者の求人で面接に来られた方の中には「パソコン作業が苦手です」とおっしゃる方が意外と多く、なかなか採用には至りません。
 そこで人材紹介会社などを使って、サービス管理責任者を採用する事業所が多いようです。
 この場合、採用したい人材の年収の何%かを紹介料として支払います。地方によって異なりますが、1人採用するだけでざっくり100万円ほどを紹介料として支払うことになるので、驚かないでくださいね💦

利用者の人件費を稼げない

 就労継続支援A型の最難関と言っても過言ではないのが、利用者の人件費の確保です。
 事業所は利用者と雇用契約を結ぶため、一般就労と同様に、最低賃金法に定める最低賃金額以上の賃金を払わなければいけません

 上記の『・就労継続支援A型とは?』でもご説明しましたが、一般事業で得た利益を利用者の給与に充てるのが理想的です。
 しかし実際は、利用者の人件費を確保するだけの売上げがないときもあります。そのような場合は、国保連からの収入を利用者の賃金に充てるしかありません。
 そうなると今度は、スタッフや固定費をどこから捻出するのか? という問題にぶつかります。

 具体的に、国保連からの入金を利用者の賃金に充てるとどうなるのでしょうか?

【 例 】
・利用者が1日通所した場合、国保連から事業所へ6,600円が入金
・時給1,000円の利用者が5時間働いた場合の賃金5,000

 → 6,600円-5,000円=1,600(利用者1人当たり)が事業所の収入

 さて、この1人当たり1,600円の収入で、事業所の運営経費(スタッフの人件費、家賃、光熱費、車両代、材料費、営業経費など)を賄えるでしょうか? 私は無理だと思います。

 ちなみに、保険外の収入で利用者の人件費が賄えない場合『 事業改善報告書 』を作成・提出しなければなりません
 そのため、国保連からの入金を利用者の人件費に充てることはお勧めしません。

就労継続支援A型は、あくまでも障害福祉サービス

 就労継続支援A型で事務スタッフの求人募集をすると、たくさんの応募連絡がきます。
 しかし就労継続支援は、あくまでも障害福祉サービスです。裏を返せば、一般企業などでの就労が困難な人たちが求人募集に応募してくるということです。

 身体障がい者であれば、ハード面での一般就労が難しかったのだろうかと想像がつきます。
 知的また精神障がい者は、できることの得意・不得意などの個人差が大きいため、作業内容によっては彼らの労働だけで売上げを確保することは難しいでしょう。

 就労継続支援A型は、一般企業と同様に利用者と雇用契約を結びます。
 しかし、事業所は利用者に就労の機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練を行い、最終的には一般就労してもらうことが目標です。

 企業として売り上げを出すこと、そして、利用者を一般就労へ移行してもらうことその両方を求められるのが就労継続支援A型なのです。

グッドとグラフ

・就労継続支援A型の運営が成功している事業所とは?

 就労継続支援A型の運営成功のカギは、やはり、保険外の一般事業の収入がどれだけ見込めるか? の一言に尽きると思います。
 私はこの点をクリアできずに就労継続支援A型の事業所を閉所しましたが、利用者の賃金を確保している事業所もあります。
 そのような事業所は、どのように一般事業の収入を獲得しているのでしょうか?

《 親会社からの仕事が安定的に見込める 》
 この事業形態であれば、就労継続支援A型の一般事業の収入を安定的に確保できます。
 親会社でなくとも、グループ会社や提携している会社からでも構いません。利用者が携われる事業で、かつ、継続的に仕事をもらえる事業所であれば、利用者へ支払う賃金を確保できますよね。

 よく耳にするのは、清掃作業やクリーニング作業、飲食店や農家などから仕事を請け負っている事業所です。
 どのような仕事を請け負うにしても、以下の点に注意が必要です。

《 簡単すぎる作業のリスク 》
 →利用者へ支払う最低賃金額を下回る請負金額になる可能性がある

 →簡単すぎる作業は将来的に機械化され、仕事がなくなる可能性がある

《 請負金額が高い作業のリスク 》
 →利用者にとって難易度が高く、スタッフが作業の中心となる可能性がある

 →納期に間に合わせるために、残業時間が多くなる可能性がある

 利用者の最低賃金額を上回る請負金額で、機械化されにくく、継続的に任される仕事。これが一番理想の形です。ただ現実的には、そういった仕事はなかなか見つかりません。

 就労継続支援A型の事業所は、利用者へ障害福祉サービスを提供するだけではなく、利用者へ支払う賃金を確保できるような仕事を継続的に取ってこられる営業力も必要なのです。

ハートが生まれる

 いかがでしたか? 就労継続支援A型を運営するポイントは2つです。

 ①事業所の利用者に賃金を支払うこと
 ②利用者に支払う賃金を保険外の収入で賄うこと

 特に②をクリアできるような仕事を請け負うことができ、またその仕事がしたい利用者を集められたら、就労継続支援B型の事業所を運営するよりも損益はよくなるはずです。

 私が代表を務める法人は就労継続支援A型から撤退してしまいました。今回お伝えした内容は、私が体験したうえで感じたことのほんの一部です。さらに詳しい体験談がお知りになりたいと思いましたら、弊社北日本ケアサポートまでお問合せください。
 こんな仕事は利用者が集まって請け負えるだろうか? などのご質問についても、私、鷲尾が直接お話いたします。

 就労継続支援A型は、一般就労を目指す障がい者にとって必要な障害福祉サービスの1つです。このサービスを成功させる人が1人でも多く出るのであれば、私としても本望です。

 また北日本ケアサポートは、障がい福祉サービス請求などを代行する企業です。それだけではなく、処遇改善加算に関する書類作成や事務コンサルティングなど、多岐にわたってお客様をサポートいたします。

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《 記事原案者 》
鷲尾 和巳鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶
北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者

《 記事加筆編集者 》
北日本ケアサポートスタッフ北日本ケアサポートスタッフ:A
介護事務管理士 資格保持者