特定処遇改善実績報告書は、処遇改善加算の実績報告書と何が違う? 注意すべき点は?

 こんにちは! 北日本ケアサポートです。

 今回は、介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)の算定に関わる『 処遇改善実績報告 』の書き方について説明いたします。
  前回→7月末日が期限! 処遇改善実績報告の書き方とは? ―処遇改善加算編―

 処遇改善加算も特定処遇改善加算も、同じ実績報告書を使用します。ただし、特定処遇改善加算の実績報告処遇改善加算とは違う点があり、注意が必要です。
 *なお介護職員等特定処遇改善加算については、以前ご説明した記事があります
 《過去記事》特定処遇改善加算とは? 要件や配分ルール、1と2の違いなど疑問を解決

CHECKを指さし

・事前に準備すべきことは?

 必要な書類は、処遇改善加算の実績報告する際と基本的に同じです。

①賃金台帳
②処遇改善加算等総額のお知らせ

③昨年度に作成した処遇改善計画書

 そして特定処遇改善加算分を、3月分の給与として払い終えておく必要があります。
 帳簿上の処理方法は、処遇改善加算の実績報告の記事でお伝えした方法と同じです。また、報告する年度(4月サービス提供分~翌年3月サービス提供分)で計上された金額より、1円でも多くの支払いをすることが大前提となります。

 ただし、特定処遇改善加算が処遇改善加算と違う点『 計画書の段階で、配分ルールを決めている 』という点です。
 特定処遇改善加算は、経験・技能のある介護職員に対する配分が多く、介護職員以外の職員にも配分が可能な点が特徴です。
 このことから、特定処遇改善加算分を支払う際は、どのような配分にしたかを計画書であらためて確認してくださいね。


・特定処遇改善加算の実績報告で注意すべき点とは?

 上記でもお伝えした通り、特定処遇改善加算(特定加算)は、計画書の時点で決めた配分ルール実際はどのように支払われたのかを報告する必要があります。
 記載すべきところは、以下の2カ所です。

平均賃金改善額

処遇改善実績報告書(平均賃金改善額)

厚生労働省:実績報告書記入例(令和4年度)より

 

 処遇改善実績報告―処遇改善加算編―でもお伝えしましたが、基準額は、計画書通りに記載すると訂正するように自治体から連絡が来てしまいます。
 注意すべき点は、基準額(前年度の平均賃金額)を修正する場合、計画書で提出した配分ルールを逸脱しないことです。

 そして、別紙様式3-2の特定加算の『本年度の賃金の総額』『本年度の常勤加算職員数』の項目を入力すると、上記の図の『本年度の平均賃金額』が自動的に入力されます。
 一番右にある要件Ⅵに「○」の判定が出ていれば、配分比率の要件を満たしているので問題ありません。

月額平均8万円又は改善後の賃金が年額440万円となった者

 処遇改善実績報告書の別紙様式3-2というExcelシートの『特定加算』の記入欄には、以下の項目があります。

経験・技能のある介護職員のうち月平均8万円以上又は年額440万円以上[人]

 この項目に該当の人数を入力すると、別紙様式3-1の「いずれかに該当する人数(下記図)に反映されます。そしてその横にある要件Ⅴの欄に「○」が表示されると、要件が満たされたと判断できます。

処遇改善実績報告書(特定加算)

厚生労働省:実績報告書記入例(令和4年度)より

 ですが、月額平均8万円または年額440万円を超えた職員がいない場合は、どうしたらよいのでしょうか?
 その場合は「設定できない事業所があった場合その理由」(図)の該当する項目に、レ点を入れてください。

 訪問型サービス以外は特定処遇改善加算の加算率が低いため、月平均8万円または年額440万円以上を超えるように配分できる原資がないことがほとんどです。
 また訪問型サービスであっても、この配分対象が管理者のみになってしまう場合があります。

 処遇改善計画書の段階で、どのように配分するかを全職員へ周知することが必須です。
 必須ではありますが「管理者のみに全額を配分します」と、全職員に周知する勇気は私にはありません()
 なぜなら、現場職員と管理者との賃金の差が開きすぎてしまうからです。そうなると、管理者は仕事がしづらくなり、現場職員のモチベーションも下がると容易に想像できますよね。

 実際、私がコンサルティングしている事業所や私自身が経営している事業所では、「設定できない事業所があった場合その理由」にチェックを入れていることがほとんどです。


メモ帳に書かれた?と!

 

・法定福利費など事業所の負担分の扱い

 処遇改善加算で支払う賃金が上がると、当然ながら社会保険などの法定福利費も上がります。そうなると事業所側の負担も増加しますよね。

 処遇改善実績報告書の「本年度の賃金の総額」には、賃金改善に伴う法定福利費など事業所負担分も含めて記載して構いません
 ただし、処遇改善加算ギリギリの支出額にする場合は、処遇改善加算等総額から逆算しなくてはなりません。その点はしっかり計算してください。

 先日、クライアントから以下のような質問をいただきました。

「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ処遇改善加算」それぞれの社会保険料上昇分を計算しなくてはいけませんか?

 これは、まとめて計算して大丈夫です。

 例えば、処遇改善加算手当だけでは社会保険料の等級が上がらなくとも、特定処遇改善加算の手当が加わることにより、等級が1つ上がります。その分、事業所の負担も上がります。
 社会保険料の計算方法は、『標準報酬月額』または『総支給額』を用いて計算します。そのため、加算ごとに社会保険料上昇分を計算することは厳密には難しいのです。

 では処遇改善実績報告書には、どのように記載すれば良いのでしょうか?

 私がコンサルティングしている事業所や経営している事業所では、売上と加算配分のパーセンテージに合わせ、上昇分も割り振りするようにしています。……と言いますか、この方法しかないと思っています。そして、これで行政側から何らかの指摘を受けたことはありません。
 それぞれの自治体によって解釈は異なると思いますが、1つの記入方法として覚えておいてください。

腕を伸ばす女性

 いかがでしたか?
 特定処遇改善加算(特定加算)の実績報告は、通常の処遇改善と異なり、計画書の段階で配分ルールをある程度固めています。
 そのため、以前に提出した計画書の配分ルールをしっかり確認しながら、配分をきっちり行ってください。そして処遇改善実績報告書には、配分した数字を正確に記載する必要があります。

もしも処遇改善実績報告書などについてお困りのことがあれば、弊社北日本ケアサポートまでご相談ください!
 北日本ケアサポートでは、介護保険(介護報酬)の請求事務代行のほかに、事業所が作成する処遇改善計画書や処遇改善実績報告書を代行で作成、事務コンサルティングなども承っております。ぜひ、気軽にご連絡いただければと思います。

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《 記事原案者 》
鷲尾 和巳鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶
北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者


《 記事加筆編集者 》
北日本ケアサポートスタッフ北日本ケアサポートスタッフ:A
介護事務管理士 資格保持者