現行の処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算を一本化した、新たな「介護職員等処遇改善加算」について解説
こんにちは! 北日本ケアサポートです。
介護業界の離職率が高い現在、それを食い止めるために事業所が職員の賃金に充てる3つの加算『処遇改善加算』『特定処遇改善加算』『ベースアップ等支援加算』があります。
令和6年度の介護報酬の改定では、上記の加算をまとめて『 介護職員等処遇改善加算 』 として一本化されます。
具体的にはどのような加算となるのでしょうか? 2024年1月までに厚生労働省が公表している情報を基に解説していきます。
・介護職員等処遇改善加算のイメージ
厚生労働省:第233回社会保障審議会介護給付費分科会の資料によると『 介護職員等処遇改善加算 』イメージは以下のようになるようです。
*改定後の加算率は、令和6年1月22日に公表された資料とは異なっております。ご注意ください
*厚生労働省:介護給付費分科会『介護人材の処遇改善等(改正の方向性)』より |
上記の図から分かるように、左側の新加算に対応する現行の加算等が右側に記載されています。現在取得している加算が、新設される介護職員等処遇改善加算のどれに該当するか、分かりやすく表されています。
この介護職員等処遇改善加算ですが、現行の処遇改善加算や特定処遇改善加算で行われる一時金(賞与)ではなく、月額賃金の改善を要件としているようです。
私見ではありますが、この新設される加算は現行のベースアップ等支援加算を基にしているのではないかと感じました。
また図の*2にあるように、令和6年度末までは、現行加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)の取得状況に応じた経過措置区分:介護職員等処遇改善加算V(1)~(14)が設けられています。
つまり令和6年度は、介護職員等処遇改善加算に移行するために設けられた準備期間なのです。現行のベースアップ等支援加算を取得していない事業所は、翌年度に向けて月額賃金の改善を考えなければいけません。
・分配ルールの柔軟化
新たな介護職員等処遇改善加算は、以下のような分配ルールに変更されるようです。
① | 介護職員への分配を基本とする |
② | 特に経験・技能のある職員に重点的に分配する |
③ | 職種に着目した分配ルールは設けず、事業所内で柔軟な配分を認める |
現行では、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算のそれぞれで分配のルールが設けられていました。
そのため、事務作業の煩雑さや制度の複雑さ、職種間の賃金バランスや利用者の負担増加を理由に、現行の処遇改善系の加算を取得していない事業所が一定数あるのです。
つまり、現行の処遇改善系のシステムは、事業所にとって使い勝手が悪いのではないかと思われます。
弊社北日本ケアサポートでは処遇改善加算計画書・実績報告書作成を代行しておりますが、昨年は多くのお客様から計画書・実績報告書作成のご依頼を承りました。
外部へ委託したくなるほどに、現行の処遇改善系の加算は取得と維持が大変であることは、弊社も痛感しております。
このような観点からも、新たな介護職員等処遇改善加算は、より多くの介護事業所が取得しやすい柔軟な分配ルールとなるようです。
・職場環境等要件の見直し
現行の処遇改善加算の要件の1つ、職場環境等要件も新たに見直される予定です。
新設の介護職員等処遇改善加算における職場環境等要件の区分は、現行と同様に以下の6つに分けられます。
① | 入職促進に向けた取り組み |
② | 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 |
③ | 両立支援・多様な働き方の推進 |
④ | 腰痛を含む心身の健康管理 |
⑤ | 生産性向上のための業務改善の取組 |
⑥ | やりがい・働きがいの醸成(*) |
*醸成:考え方や雰囲気を徐々につくること |
各区分の具体的内容は、既存の要件を具体化・明確化したもの・新規に付け加えられたものもあります。特に⑤生産性向上のための業務改善の取組は、現行よりも大幅に追加・修正されています。
現行の介護職員処遇改善加算では、①~⑥の区分から1つ以上取り組めば要件を満たしていました。しかし、新たな介護職員等処遇改善加算では、区分ごとにそれぞれ取り組む必要があります。
*厚生労働省:介護給付費分科会『介護人材の処遇改善等(改定の方向性)』職場環境等要件の見直し案参照
このことから、職場環境等要件に関しては、現行よりも厳しくなったと言えるでしょう。
いかがでしたか? 処遇改善加算の一本化は、介護サービスだけではなく障がい福祉サービスでも同様に新設される予定です。
*厚生労働省:障害福祉サービス等報酬検討チーム『障害福祉分野の処遇改善について≪論点等≫』参照
令和6年度介護報酬改定では、その内容により施行時期がずれるものがあります。今回の処遇改善系の加算については、以下のように施行時期が異なるので注意が必要です。
処遇改善関係加算の一本化 |
現行の処遇改善関係加算 (事業所内での柔軟な職種分配を認める改正) |
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令和6年6月1日施行 | 令和6年4月1日施行 |
このように、介護職員等処遇改善加算への移行の前に、現行の処遇改善関係の内容が一部改正されます。
2024年1月22日、厚生労働省の社会保険審議会介護給付費分科会から介護報酬改定についての諮問書(見解を求める書類)が公表されました。別紙には、各介護サービスについての具体的な単位数も載っています。
厚生労働省の資料を見ていると、介護報酬改定の審議もいよいよ大詰めなのだと実感しました。
また介護事業所も障がい福祉事業所も、新たな処遇改善加算に向けた職場環境の整備やルールの設定など、準備に時間がかかることは間違いありません。
介護保険法と介護報酬の改定は、3年に一度のペースで行われます。
日々の業務を行いながら大きな制度変更に対応することは、事務所スタッフにとって大きな負担となります。
弊社北日本ケアサポートは、介護保険(=介護報酬)の国保連への請求代行を行う会社です。
処遇改善加算の計画書・実績報告書などの提出書類の作成補助もさせていただいております。新たな制度改定を機に、国保連への請求代行を検討してみてはいかがでしょうか。
国保連への請求代行以外にも、事務コンサルティングなど、事業の成長を幅広くサポートしております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
*過去記事
・訪問介護の特定事業所加算とは? 実態に沿った分かりやすい言葉で解説
・介護事業所のコンサルティングとは? オーダーメイドの実例を紹介します
《 記事原案者 》 | |
鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶 北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者 |
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《 記事加筆編集者 》 | |
北日本ケアサポートスタッフ:A 介護事務管理士 資格保持者 |