介護・障がい福祉事業所の収益に直結する返戻を無くすには、『共有』『引継ぎ』『確認』が重要!

 こんにちは! 北日本ケアサポートです。

 弊社は、介護・障がい福祉事業所に代わって国保連への請求業務を行っています。そのお仕事の中で、クライアントからよく受ける相談が『 返戻 』についてです。
 そこで今回は、よくある返戻事由を3つ挙げて、その対策をご紹介したいと思います。

透明な青のcheck

・そもそも『返戻』とは?

 介護または障がい福祉事業所は、利用者に提供したサービスのひと月分の報酬を、翌月10日までに国保連(=国民健康保険連合会)へ請求します。
 イメージとしては、私たちが病院を受診した際、窓口で3割ほどの受診料を支払いますよね。そして残りの7割は、病院が国へ請求しています。
 これと同様のことを、介護や障がい福祉サービスでも行っているのです。

 事業所が国保連へ請求する財源は、介護報酬は介護保険料+公費。また、障がい福祉サービス等報酬は公費のみです。
 そのため国保連は、事業所から送られてきたレセプトなどの請求データに不備がないかを厳正に審査し、もし不備があった場合は、事業所へ請求データを差し戻します。
 これがいわゆる『 返戻 』と呼ばれるものです。

 返戻として国保連から差し戻された請求は、当然、事業所へ報酬が支払われることはありません
 そうなると事業所の運営にも影響してくるため、返戻にならないよう国保連への請求には注意を払わなければいけません。

青空と注意喚起

・返戻事由その1:利用者の基本情報の相違

 利用者の被保険者証や受給者証に記載されている情報の入力ミス、または、国保連が保有する『受給者台帳』との内容不一致により返戻が発生します。
 以下に、具体的な返戻のケースとその対策を二つご紹介します。

《 ケース① 》

 新規利用者や既存利用者の被保険者証・受給者証情報の請求ソフトへの入力ミスによる返戻

 新規利用者の場合、請求ソフトに一から情報を入力するため、被保険者番号や受給者番号などの入力ミスが起こりがちです。

 既存利用者の場合、基本情報の変更で再入力しますが、その際に入力ミスが起こりがちです。
 数字などの転記ミスもありますが、例えば、情報内容が翌月から適用するにもかかわらず、その月に内容を変更してしまい、利用者情報不一致として返戻になる場合もあります。

《 対策 》
・請求ソフトへ入力した時点での、被保険者証・受給者証と入力内容の突合(突合せ)
 入力内容の突合は必ず行うと思いますが、入力者は「間違いはない」という思い込みで作業をしがちです。そのため、できれば入力者以外のスタッフにも二重チェックしてもらうことをお勧めします。

・国保連へ送る請求データを作成後、給付費明細書で基本情報を再度確認
 給付費明細書は、請求ソフト内に保管されたデータを反映したものです。そのため、給付費明細書の記載内容と被保険者証・受給者証の内容が一致するかを再度確認することで、より精度の高い記載内容が出来上がります。

《 ケース② 》

 国保連は、保険者または市町村から提供された利用者情報を『受給者台帳』に登録するが、この受給者台帳と事業所の利用者情報の不一致による返戻

 この場合、事業所側の利用者情報がどんなに正しくても、国保連が保有する受給者台帳と異なれば返戻となります。
 よくある原因は、月途中で利用者情報が変更になった場合に、国保連の受給者台帳の反映が間に合わないことなどがあげられます。

《 対策 》
 月途中で変更になった被保険者証や受給者証を受け取った際、保険者や市町村の役所へ何月何日付けで利用者情報が変更になるのかを確認しておくと良いでしょう。そうすることで、役所側も国保連への情報送信漏れを防ぐことにつながります。

クローバーと建物

・返戻事由その2:居宅介護支援事業所との情報の相違

 介護事業所の場合、国保連は、居宅支援事業所に常駐しているケアマネジャーが作成した『給付管理票』と介護事業所が実際に提供したサービス内容や回数などを突合します。
 ケアマネジャーが国保連へ給付管理票を提出(=伝送)し忘れることでも、事業所側の返戻となってしまいます。

《 対策 》
・ケアマネジャーとは、メールによるデータ共有をする
 国保連への請求時期は、皆さんもご存じの通り、とんでもなく忙しいです💦その多忙な時期に、FAXによる紙ベースでやり取りをすると誤送信や用紙の紛失が起こりがちです。

 ケアマネジャー側に立ってみると、利用者が使っている各事業所に、利用者ごとの給付管理票を送信するわけです。利用者が多ければ多いほど、利用している事業所が多ければ多いほど、その作業量の膨大さは想像できますよね

 そこで、FAXでのやり取りではなく、メールでデータの共有をすれば、相当の時間短縮になると思いませんか? また、ケアマネジャーも事業所も気持ちに余裕が生まれるため、思い違いやミスの軽減につながるはずです。
 また、事業所とデータでやり取りすることにより、ケアマネジャーが給付管理票を国保連へ伝送し忘れることも防げるかもしれません。

 紙ベースからメールにするメリットはまだあります。それは『 相手の仕事を邪魔しない 』ということです。
 もちろん、緊急性が高いまた重要な内容の場合は、電話でのやり取りは必要です。ですがメールは、やり取りの記録が文章で残るうえに、互いのタイミングで返信できます。
 このような気遣いは、ケアマネジャーと事業所とのやり取りが円滑になり、より深い関係性が築けるのではないでしょうか。

付箋の中の!?

・返戻事由その3:事業所の体制情報が市区町村と異なる

 サービスを提供する事業所は、介護報酬や障がい福祉サービス等報酬の算定に関連する体制などについて、都道府県等に届け出る必要があります。
 例えば、『処遇改善加算』はよく知られている体制加算ですよね。ほかにも『サービス提供体制加算』や障がい福祉の『送迎加算』なども、届け出が必要です。
 これらの加算には算定要件があり、事業所の体制変更により加算が算定できなかったり、逆に、要件を満たしていれば算定できるようになったりします。

 事業所の体制変更で返戻になる・ならないのキーが、どのタイミングで事業所の体制変更の届出を出したか? です。
 届け出が必要な加算などは、書類の提出期間が決まっています。この期間が過ぎると、翌々月からの算定開始になってしまいます。
 そのため、算定の開始時期を把握していないと、国保連が保有する『事業所台帳情報』と不一致返戻になる可能性があるのです。

《 対策 》
・事業所の体制変更届書類の作成者と国保連への請求担当者の情報共有
 体制変更届の書類を作成する職員と国保連へ請求する職員が同一とは限りません。この場合、新たな算定開始の時期がいつからなのか、情報を共有する必要があります。
 どちらが情報を提供するのか……というよりも、事業所の体制が変わると分かった時点で、お互いに算定変更の可能性を認識するべきだと思います。

・体制変更の届出を提出した際の『控え』の保管
 職員配置など事業所の体制が変更するたびに、事業所は役所へ体制等に関する届出書を提出する必要があります。
 届出書を提出すると、役所から届出書の控えを渡されるはずです。その控えをキチンと保管しておきましょう。
 控えがあれば、いつ・どのような届出書を提出したかがハッキリするので、算定の開始時期もおのずと分かるからです。

 事業所の体制変更届の書類は管轄の行政機関のサイトに掲載されていますので、一度確認したほうが良いでしょう。
 参考までに、札幌市の変更届のリンクを載せておきます。

 ・介護事業・変更届(居宅サービス)
  →https://www.city.sapporo.jp/kaigo/k200jigyo/hennkou.html
 ・障がい福祉事業・変更届
  →https://www.city.sapporo.jp/shogaifukushi/zigyoshasitei/9_henkoutodoke.html

オフィスで指さすビジネスウーマン

 いかがでしたか? 意外な理由で返戻が発生しているとお分かりになったかと思います。

 今回は3つの事例を挙げましたが、すべてに共通していることは『 共有 』『 引継ぎ 』『 確認 』を確実に行うことだと思います。「言わなくても・聞かなくても、わかるだろう」という思い込みがミスを誘発することを、私たちは日々の仕事を通してよく知っているはずです。

 弊社北日本ケアサポートは、介護・障がい福祉事業所に代わって国保連への請求業務を行っていますが、その中で大切にしていることもやはり『 共有 』『 引継ぎ 』『 確認 』です。
 これは、国保連請求の代行を依頼していただいたお客様との間で行うことはもちろん、北日本ケアサポートのスタッフの間でも大切にしていることです。

 もし過去分の返戻が処理できずにお困りの際は、お客様に代わって北日本ケアサポートが、過去2年分までさかのぼって再請求することも可能な場合もあります。
 このほかにも、ご自身の事業所が請求業務(レセプト業務)代行の利用が可能かなど、お気軽にお問い合わせください。
   *国保連への請求代行で事業所様から良くいただくご質問→質問内容と回答はこちらから

*過去記事
介護報酬請求の返戻を未然に防ぐ! そのためにやるべき事は何か?

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《 記事原案者 》
鷲尾 和巳鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶
北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者

《 記事加筆編集者 》
北日本ケアサポートスタッフ北日本ケアサポートスタッフ:A
介護事務管理士 資格保持者