障害者自立支援法のサービス体系の1つ、地域生活支援事業。この事業に含まれる『 移動支援 』について解説
こんにちは! 北日本ケアサポートです。
障がい福祉に関するサービスは障害者自立支援法に基づき、同行援護や就労移行支援などの『 障害福祉サービス 』と、移動支援や地域活動支援センターなどの『 地域生活支援事業 』に大別されます。*障害福祉サービス等のサービス体系(厚生労働省HPより)
今回は、地域生活支援事業の1つである『 移動支援 』についてご説明いたします。
*本記事内では「障害」の文字が混在しますが、法令または行政サイトの表記をそのまま使っております
・移動支援とは
移動支援は、社会生活をする上で必要不可欠な外出(冠婚葬祭や選挙など)および余暇活動(美術館など公共施設の利用)など、社会参加のために外出する際、障がい者の移動を支援するサービスです。
移動系のサービスには、障害福祉サービスの『 居宅介護(通院等介助) 』『 重度訪問介護 』『 同行援護 』『 行動援護 』もあります。ただしこれらのサービスには、一定の障害支援区分が利用要件として設けられています。
移動支援の利用要件は、障害福祉サービスとは異なり、障害支援区分がないため、利用対象者は広範囲に渡ります。
以下の図は、厚生労働省が移動の支援について公表した資料の中から抜粋したものです。
*資料は平成27年のものですが、障害支援区分は令和5年2月現在と同一です
冒頭でもお伝えしましたが、移動支援は『 地域生活支援事業(*) 』の1つです。
つまり、地域の特性や利用者の状況に対して柔軟に応じられるよう、利用対象者や支援方法、外出先範囲、費用負担などは、市町村等が裁量権(その地域ごとで判断・行動できる権利)を持っています。
*地域生活支援事業とは… |
・移動支援の地域ごとの違いとは?
移動支援は市町村等に利用要件などの裁量権があるとお伝えしましたが、実際に、大阪市・東京都・札幌市で比較してみたいと思います。
大阪市(2023年現在)
対象者:大阪市内在住の在宅の障がいのある方で、外出の支援を必要と認められる以下の者
重度の盲ろう者(児)/知的障がい者(児)/精神障がい者(児)/施設に入所している全身性障がい者/重度の全身障がい者
*ただし、個別給付事業の『重度訪問介護』『同行援護』『重度障がい者等包括支援』の受給者は対象外です
大阪市は、通常の外出支援のほかに『 大学修学支援 』という移動支援があります。
この支援は、重度の障がいのある方で、大学等の修学における外出の支援を必要とする方が対象です。ただし利用対象者の要件が、障がいの種別によって異なります。
*大阪市における移動支援事業の概要
東京都(2023年2月現在) *2023.7.18に一部内容を修正しました
東京都は各区(特別区も含む)で移動支援の対象基準が設けられています。
例えば、江戸川区の移動支援対象者は細かく設定されている印象を受けました。
*江戸川区障害福祉サービス等支給ガイドライン(令和3年5月)
しかし江東区の移動支援対象者は江戸川区ほどではないように思えます。
*江東区移動支援事業ガイドライン(令和5年4月)
どちらの区も『重度訪問介護』『行動援護』『同行援護』の支給決定を受けている方は、移動支援の利用対象になりません。
また、各区によって1月あたりの基準支給時間も異なるようです。
江戸川区・江東区では詳細な内容がネット上で公開されていましたが、北区では大まかな内容しか公開されていませんでした。
そのため、不明な点は、各区の移動支援事業に関する窓口に確認したほうが良いかと思います。
札幌市(2023年2月現在)
対象者:居宅において生活を営んでいる方のうち、重度の視覚障がい(グループ支援型に限る)、重度の全身性障がい、知的障がい、あるいは精神障がいのために単独での外出が困難な方
より詳しい内容は、札幌市移動支援事業「移動支援ガイドライン」に公開されています。
各市町村で共通していることは、『 重度訪問介護 』『 同行援護 』『 行動支援 』の受給者は、移動支援の対象から外れるということです。
なぜなら、上記のサービスには「移動中の介護または援護」が含まれているため、そちらが優先されるからです。
《 通所・通学の移動支援について 》
大阪市の『大学修学支援』という移動支援に関して、保護者の送迎ができるかどうかは利用要件として書かれていませんでした。
ですが、東京都江戸川区・江東区、札幌市は、通所や通学に関して保護者の支援が得られない事情がある場合に限り、移動支援の利用が可能です。*この利用条件も各地域によって異なります
《 通勤、営業活動等の営利活動による外出・通年かつ長期にわたる外出についての移動支援 》
「通勤、営業活動等の営利活動による外出」や「通年かつ長期にわたる外出」についての移動支援は、厚労省では禁止としていません。
しかし多くの市町村では、上記の目的での移動支援の利用を認めていないのが実態のようです。理由は公表されていませんが、おそらく、各地域の経費と人材の問題、そして雇用者側で障がい者の移動を支援すべきという、市町村の考えがあるのではないかと推測します。
ちなみに、競馬やパチンコなどのギャンブル、公序良俗に反する外出は、移動支援の対象外です。
このように、障害者自立支援法に基づく障がい福祉のサービスには、移動支援のように各地域で異なる規定を設けているサービスが存在します。
そのため、サービス提供を行う障がい福祉サービス事業所は、利用者の居住地域の要件に従い、事業所の指定を取ったり、国保連への請求業務を行ったりする必要があります。
すべての利用者が同一地域であれば、市町村への移動支援に関わる確認作業はそれほど大変ではないかもしれません。ですが、さまざま地域に住む利用者がいる障がい福祉サービス事業所になると、その利用者ごとに地域の利用要件などを確認しなければならず、時間と労力が奪われてしまいます。
弊社北日本ケアサポートは、国保連への請求事務(レセプト)代行を行う企業ですが、ほかにも『 事務コンサルティング 』や『 国保連請求に関する相談業務 』など、多岐にわたってお客様をサポートしております。
障がい福祉サービスの事務作業でお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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《 記事執筆者 》
北日本ケアサポートスタッフ:A
介護事務管理士 資格保持者