特定処遇改善加算の取得方法は? 勤続10年は必須? パートや看護師などの介護職員以外も対象? その疑問、北日本ケアサポートがお答えします!

 こんにちは! 北日本ケアサポートです。
 前回は、処遇改善加算についてQA形式でご説明いたしました。
  *前回 → 処遇改善加算とは? 取得や支給方法、注意すべき事など素朴な疑問を解決

 今回は、さらなる処遇改善『介護職員等特定処遇改善加算』について、ご説明したいと思います。
 事業所が特定処遇改善加算を取得したいと考えた場合、処遇改善加算の取得よりも疑問点が多いのではないでしょうか?
 そこで今回も、介護事業所の皆様からいただくご質問で、特に多かったものについてOA形式でお答えします。ご参考になれば幸いです。

よくある質問

Q:そもそも『 介護職員等特定処遇改善加算 』とは?

 特定処遇改善加算は、201910月の介護報酬改定において、介護職員のさらなる確保・定着につなげていくために創設されました。
 この特定処遇改善加算は、経験・技能のある介護職員に重点化しつつ、一定程度のほかの職種の処遇改善も行える柔軟な運用を認めている加算です。

 前回ご説明した『処遇改善加算』 は、あくまでも介護職員のみに配分されます。
 また、この処遇改善加算の短所は、スキルが高いまたは経験豊富な介護職員も経験の浅い新人の介護職員も、同等に配分される点です。
 経験値や技能の高い介護職員からすると、処遇改善加算は必ずしも平等とは言えませんよね。

 そこで特定処遇改善加算は、経験・技能のある介護職員に対する配分多く設定しています。
 もう一つの特徴は、処遇改善加算では対象外だった介護職員以外の職員も、配分の対象となっている点です。

Q:介護職員等特定処遇改善加算の『 算定要件 』とは?

A:算定要件は、以下の3つをクリアする必要があります

(1)

 現行の処遇改善加算Ⅰ~Ⅲを取得している
(2)

 処遇改善に関する加算の「職場環境等要件」の区分ごとに、それぞれ1つ以上取り組んでいる  厚生労働省:介護職員の処遇改善加算について(職場環境等要件) 

(3) 賃上げ以外の処遇改善の内容について、インターネット等の適切な方法で公表している

 ちなみに……介護職員等処遇改善加算の実際の算定方法は、処遇改善加算の記事でご紹介した方法と同じです(処遇改善加算の加算率を、特定処遇改善加算の加算率に変えればOK)

ノートにチェックの文字

Q:介護職員等特定処遇改善加算の『 配分ルール 』とは?

A:賃上げする職員の範囲、賃上げ額と方法を以下のように決めます

 まずは、介護事業所の職員を3つに分類します。

 ( A ) 経験・技能のある介護職員

 → 介護福祉士の資格を持ち、所属する法人等における勤続年数10年以上の介護職員

 ( B ) 他の介護職員

 → 経験・技能のある介護職員を除く介護職員(介護福祉士の資格がない看護師やホームヘルパーなど)

 ( C ) その他の職員

 → 介護職員以外の職員

 
 ここで分かりづらいのが、( A ) 経験・技能のある介護職員定義です。
 厚生労働省では、介護福祉士の資格は必須要件としつつ、勤続10年の考え方は、介護事業所の裁量で設定することを認めています。

 つまり、勤続10年以上の介護職員がいなくとも、他の介護事業所での勤務実績も含めて10年以上の介護職員がいる。または、「管理者」「管理者とサービス提供責任者」「当社で3年以上勤務しており、優秀な技能を有していると会社が認めた者」など……
 介護福祉士の資格が必須であること以外は、『( A ) 経験・技能のある介護職員』の定義を各事業所で自由に決めても良いのです。
 この場合、介護職員等特定処遇改善加算の計画書の『経験・技能のある介護職員の考え方』に、自社で決めた定義を記載すれば問題はありません。

 このように、介護事業所を開業して10年経過していない場合や、勤続年数10年以上の介護職員がいない場合でも、介護職員等特定処遇改善加算の申請が可能です。
 *ちなみに、厚生労働省では特定処遇改善加算の対象者を、正職員に限定する規定はありません。そのため、パート職員であっても、介護職員等特定処遇改善加算の対象者となりえます。


 次に、( A )( C )のどの職員に対しどのような賃上げするか……つまり、特定処遇改善加算で得た金額をどのように配分するかを決めます。

特定処遇改善加算の配分

*厚生労働省:介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の概要より

 厚生労働省の図からも分かるように、どのように配分するとしても『( A ) 経験・技能のある介護職員』は、3つの分類の中で最も多く配分しなければいけません。
 さらに『( C ) その他の職員』の分配は、『( B ) 他の介護職員』の50%以下でなければいけません。

 厚生労働省からは、処遇改善加算や特定処遇改善加算についての通知が文章でも出ています。ただ……配分方法や計画書の書き方などは、かなり分かりづらい説明です💦
 処遇改善加算や特定処遇改善加算の計画書の書き方などで、何か不明な点がございましたら、北日本ケアサポートまでご相談ください。 お問合せ窓口こちら

Q:介護職員等特定処遇改善加算の配分で『 経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、月額平均8万以上または年額440万以上であること 』とあるが、それが困難な場合はどうすれば良いか?

A:賃金改善が困難な場合、介護職員等特定処遇改善加算の計画書に、合理的な説明を記載すれば問題ありません

 弊社がかかわってきた介護事業所を見てきた限り、月額平均8万円の改善や年額440万円の設定・確保ができた事業所はほとんどありません。
 というのも、多くの事業所は規模が小さいため、厚生労働省が求める改善の実行が難しいのが実状ではないかと思います。

 上記の質問に対する回答で「合理的な説明を記載すれば問題ありません」と書きました。
 実際は、計画書に3種類の理由が記載されており、該当するものにチェックを付ければ大丈夫です。もしそれらに該当しない場合は、その他に理由を直接記載します。

Q:介護職員等特定処遇改善加算のⅠとⅡの違いは?

A:『特定事業所加算ⅠまたはⅡ』、『サービス提供体制強化加算の最も上位の区分』を算定できるか否かによって違います

 特定処遇改善加算はまず、『介護職員処遇改善加算』が算定できることが大前提です。
 そのうえで、サービス種別ごとに決められた『サービス提供体制強化加算』の最も上位の区分を算定しているなど、以下の表の要件を満たせば、加算率の高い介護職員等特定処遇改善加算『Ⅰ』の算定が可能です。

訪問介護 特定事業所加算ⅠまたⅡ
特定施設 サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡ、もしくは入居継続支援加算
特養 サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡ、もしくは日常生活継続支援加算
療養通所介護 サービス提供体制強化加算Ⅲ
その他 サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡ
*『Ⅰ』に該当しない場合は、『Ⅱ』を算定します  

 表から分かるように、訪問介護だけは『特定事業所加算』の算定が、介護職員等特定処遇改善加算Ⅰの算定の必須要件です。

ビジネスマンの背中とグラフ

 

 介護職員等特定処遇改善加算について、弊社北日本ケアサポートがご相談を受ける場合、訪問介護事業所ですと、必ず『特定事業所加算』のお話をいたします

 実は、訪問介護の特定処遇改善加算Ⅰ(6. 3)とⅡ(4. 2)の差は、2.1%です。これは、他のサービスに比べ、突出した加算率の差なのです。
 例えば、特定処遇改善加算Ⅰに加え、特定事業所加算Ⅱ(10%)を算定できる訪問介護事業所は、両方合わせて16.3%の加算が算定できます。
 つまり、特定処遇改善加算Ⅱのみの加算と、特定処遇改善加算Ⅰ+特定事業所加算Ⅱの加算を比べると、なんと12.1%の差にもなるのです。
  *これらの加算率は、2021年度現在のものです

 仮に、月200万円の売り上げがある訪問介護事業所が、特定処遇改善加算Ⅰ+特定事業所加算Ⅱの加算を算定すると、売上が月326000円増額します。特定処遇改善加算Ⅱのみですと、月84000円の増額です。
 この金額差だけでも、かなりの違いがあると分かりますよね。

 介護職員等特定処遇改善加算は、優秀な人材確保の観点からとても重要な加算です。
 それだけでなく、特に訪問介護事業所は、特定事業所加算を取得することも経営的に重要だと言えます。
 北日本ケアサポートがコンサルいたしました訪問介護事業所には、介護職員等特定処遇改善加算と同時に特定事業所加算も取得してもらっています。その結果、黒字に転換した介護事業所を数多く見てきました。

 北日本ケアサポートでは、介護や障がい福祉事業所の経営や介護業務などのアドバイスもいたします。
 何かお困りのことがあれば、気軽にご相談ください。

《 過去の関連記事 》
介護事業所のコンサルティングとは? 具体的にどのようなことが頼める?

事業所向け請求代行サービスのご案内

国保連請求代行についてのお悩みはお気軽にお問い合わせください


《 記事原案者 》
鷲尾 和巳鷲尾 和巳(わしお かずみ)
北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者

《 記事加筆編集者 》
北日本ケアサポートスタッフ北日本ケアサポートスタッフ:A

介護事務管理士 資格保持者