介護保険負担限度額認定と特定入所者介護サービス費(補足給付)との関係性、入院・外泊、ショートステイでの支払限度額超過の国保連請求の注意点を解説
こんにちは! 北日本ケアサポートです。
介護保険負担限度額認定は、その仕組みがやや複雑です。
そのため、利用者にイレギュラーが発生した場合、国保連や利用者にどのように介護報酬を請求すれば良いのか、迷う介護事業所もあるようです。
そこで今回は、前回お伝えしきれなかった介護保険負担限度額認定について、さらに深堀して解説していきます。
※前回→確認必須! 『介護保険負担割合証』と『介護保険負担限度額認定証』

・介護保険負担限度額認定証とは
介護保険施設やショートステイ(短期入所生活介護、短期入所療養介護)を利用した場合、食費と居住費は利用者が全額負担します。
『介護保険負担限度額認定証』は、一定の要件を満たす低所得者に対し、食費と居住費の負担を軽減する際に交付される証明書です。

このように、□の部分に利用者の負担限度額が記載されています。
この負担限度額は、利用者および配偶者、同一世帯員の資産状況に応じて4つの負担段階に分類されます。
ですが、上記の介護保険負担限度額認定証を見ても分かるように、負担限度額の記載はあっても、この認定証では利用者の負担段階が分かりません。
介護事業所も利用者も、記載されている負担限度額から利用者負担段階を確認するしかないのが現状です。
ちなみに、上記の介護保険負担限度額認定証の利用者負担段階は『第3段階②』です。※R7.7月現在
・利用者負担段階と負担限度額
上記でもお伝えしましたが、介護保険負担限度額認定は、利用者およびその配偶者、同一世帯員の資産状況に応じて、4つの利用者負担段階に分けられます。
ちなみに、世帯を分離している配偶者も世帯全員に含まれます。
参考までに、令和7年7月現在の利用者負担段階の要件を以下に示します。
|
利用者 |
対象者 ※非課税年金も含む |
貯金額 (夫婦の場合) |
|
| 第1段階 | 生活保護受給者 | 要件なし | |
| 世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者 |
1,000万円以下 (2,000万円以下) |
||
| 第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税 |
年金収入金額(※) +合計所得80.9万円以下 |
650万円以下 (1,650万円以下) |
| 第3段階① |
年金収入金額(※) +合計所得80.9万円超~120万円以下 |
550万円以下 (1,550万円以下) |
|
| 第3段階② |
年金収入金額(※) +合計所得120万円超 |
500万円以下 (1,500万円以下) |
|
|
※社会福祉法人等による利用者負担権限制度事業も対象となる場合があります |
|||
そして、上記の利用者負担段階ごとに、居住費と食費の負担限度額が異なります。
※ショートステイの食費は( )の金額
|
利用者 負担段階 |
居住費 | 食費 | ||||
|
ユニット型 個室 |
ユニット型 個室的多床室 |
従来型個室 (特養等) |
従来型個室 (老健,医療院等) |
多床室 | ||
| 第1段階 | 880円 | 550円 | 380円 | 550円 | 0円 |
300円 |
| 第2段階 | 880円 | 550円 | 480円 | 550円 | 430円 |
390円 (600円) |
| 第3段階① | 1,370円 | 1,370円 | 880円 | 1,370円 | 430円 |
650円 (1,000円) |
| 第3段階② | 1,370円 | 1,370円 | 880円 | 1,370円 | 430円 |
1,360円 (1,300円) |
上記の表の負担限度額から、介護保険負担限度額認定証とは……で示した認定証が「第3段階②」と分かるかと思います。
利用者負担限度額は、あくまでも利用者が介護事業所に支払う金額です。
言い換えれば、介護事業所が利用者へ請求できる限度額ということですね。
ですが、この負担限度額だけでは施設利用料は賄いきれません。当然ながら、介護保険負担限度額認定を受けた利用者の食費と居住費を補填する制度が必要です。
それが、以下に説明する『特定入所者介護サービス費(補足給付)』という制度です。

・特定入所者介護サービス費(補足給付)とは
上記でも簡単に説明しましたが、介護保険負担限度額認定を受けた利用者の負担限度額を超えた食費と居住費は『特定入所者介護サービス費(補足給付)』として、介護保険から施設などの事業所へ直接給付されます。
この特定入所者介護サービス費の算定には、介護保険で定められた居住費と食費の『基準費用額』というものが必要です。
それはなぜか?
介護保険制度は保険料と公費を財源としているので、全国一律・平等性が求められるからです。
この基準費用額は、特定介護保険施設などでの食費や居住に要する平均的な費用を勘案し、厚生労働省(正確には厚生労働大臣)が定めます。
※北日本ケアサポートスタッフAの個人的な意見としては、地域によって物価や地価が異なるため、一律は事業所にとって不平等では?と思ったり思わなかったり……
特定入所者介護サービス費の算定に必要な基準費用額は、以下の通りです。
|
《 基準費用額 》 ※ショートステイの食費は( )の金額 |
||||||
| 居住費 | ||||||
|
ユニット型個室 |
ユニット型個室的多床室 |
従来型 |
従来型個室 |
多床室 (特養等) |
多床室 |
多床室 |
| 2,066円 | 1,728円 | 1,231円 | 1,728円 | 915円 | 437円 | 697円 |
| 食費 | ||||||
|
1,445円 (1,445円) |
||||||
ちなみに、令和7年8月1日から基準額費用の居宅費の一部が引き上がります(※)ただし、利用者の負担限度額は変わりありません。
今後も社会情勢などの影響で、基準額費用や負担限度額の変更があり得ます。いつから何が変更するかの把握は必要です。
※参照:厚生労働省『介護保険施設等における居住費の負担限度額が令和6年8月1日から変わります。(周知用リーフレット)』
※参照:厚生労働省『介護保険施設等に入所する一部の方の居住費が令和7年8月1日から変わります』
・国保連や利用者への請求ポイント
では、介護保険負担限度額認定証を持っている利用者に対する居住費と食費の算定方法と、国保連への請求方法を解説します。
基本編:利用者負担限度額と特定入所者介護サービス費(補足給付)の算定方法
| 例題 |
| 第3段階②の利用者が、介護老人福祉施設(特養)の従来型個室を31日間利用した場合 |
|
①利用者負担限度額 |
|
| 居住費 | 880円×31日=27,280円 |
| 食費 | 1,360円×31日=42,160円 |
| 合計 | 69,440円 |
この合計金額69,440円が、利用者の居住費と食費の負担額です。
|
②基準費用額 |
|
|
| 居住費 | 1,231円×31日=38,161円 | サービスコード:595123 |
| 食費 | 1,445円×31日=44,795円 | サービスコード:595111 |
| 合計 | 82,956円 |
|
|
③介護保険分請求額※国保連へ請求する金額 |
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| 基準費用額-利用者負担限度額=特定入所者介護サービス費(補足給付) | |
| 82,956円-69,440円=13,516円 |
このように、基準費用額から利用者負担限度額を引いた金額が『特定入所者介護サービス費』であり、介護事業所が国保連へ請求する金額です。
参考までに、例題の内容で計算した介護給付費明細書の特定入所者介護サービス費欄が以下です。※サービスコード・単位数などはR7.7月現在

請求ポイント①入院・外泊した場合の特定入所者介護サービス費(補足給付)の取扱い
以下の要件を満たせば、特定入所者介護サービス費(補足給付)の対象です。
|
・入院・外泊期間中において居室が当該利用者のために確保されている ・入院・外泊期間中も利用者が居住費を引き続き支払うという契約内容である |
ただし、特定入所者介護サービス費(補足給付)は、外泊時加算の対象期間である6日間までしか算定できません。
※参照:厚生労働省 介護サービス関係Q&A 連番276
外泊時加算とは、外泊時費用や外泊時在宅サービス利用費のことを指します。そして、これらの算定は月6日が限度です。
特定入所者介護サービス費(補足給付)は、外泊時加算に付随するという考え方だと言えます。
そのため、算定要件に『居室が当該利用者のために確保されている』が付くのです。
つまり、入院・外泊をする利用者の許可を得て、短期入所サービスのベッドとして居室を使用した場合、特定入所者介護サービス費(補足給付)の対象外となるので注意が必要です。
請求ポイント②区分支給限度基準額を超過した場合の特定入所者介護サービス費(補足給付)の取扱い
ショートステイ(短期入所生活介護、短期入所療養介護)は居宅サービスのため、区分支給限度基準額の対象です。
そのため支給限度額を超えてショートステイを利用した場合、支給限度額を超えた日以降の利用については特定入所者介護サービス費(補足給付)の対象外です。
ただし、利用した日の費用の一部でも支給限度額内に収まる場合は、その日は全額が特定入所者介護サービス費(補足給付)の対象として扱われます。
※参照:厚生労働省 介護サービス関係Q&A 連番1359
※参照:厚生労働省 介護サービス関係Q&A 連番1485
ちなみに、施設サービスには区分支給限度基準額はありません。

多くの事業所は、請求ソフトを導入して国保連へ送る給付費請求書・明細書データを作成しているかと思います。
請求ソフトによっては、請求ポイント①や②を自動で算定してくれるものもあります。
そうなると、特定入所者介護サービス費(補足給付)の日数を注意深く確認しないという状況が生まれてしまうかもしれません。
すると、日数の誤りにより国保連や利用者へ請求が誤ったものになりかねません。
だからこそ、請求ミスを事前に防ぐためにも、算定日数がなぜこの日数になるのか? という知識が必要なのです。
弊社北日本ケアサポートは、介護保険(レセプト業務)の国保連請求を代行する会社です。
介護の仕事に専念できるよう、お客様のニーズに合わせて代行のお仕事を自由にカスタマイズしていただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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| 《 記事原案者 》 | |
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鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶 北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者 |
| 《 記事加筆編集者 》 | |
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北日本ケアサポートスタッフ:A 介護事務管理士 資格保持者 |
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