介護事業者が発行する領収証には、医療費控除の対象となる金額の記載が必要。どのような介護保険サービスが医療費控除の対象になるかを解説

 こんにちは! 北日本ケアサポートです。

 介護保険サービスの中には、医療費控除の対象となるものがあることをご存じでしょうか?

 医療費控除は、介護保険サービスの利用者の所得控除に関わることです。
 しかし国税庁によると、介護事業者が発行する領収証には「医療費控除の対象となる金額を記載すること」とされています。
 つまり、介護事業者も提供している介護保険サービス医療費控除の対象かどうかを把握しておかなければならない、ということです。

 では、どの介護保険サービスが医療費控除の対象となるのかを解説していきます。

医療費控除の対象となる介護保険サービス

 

・医療費控除の対象:居宅サービス・地域密着型サービス編

  居宅サービス地域密着型サービスには、居宅療養管理指導や定期巡回・随時対応型訪問介護看護のような看護師や医師、保健師などによって提供されるサービスがあります。
 これらの介護保険サービスは『医療系サービス』と呼ばれています。

 医療系サービスや医療系サービスと併用して提供する介護保険サービスで、看護、医学的管理の下で提供される部分の利用者負担は、医療費控除の対象です。

医療系の介護保険サービスのみで医療費控除の対象となるもの

 医療費控除の対象となる介護保険サービスは、以下の通りです。

居宅サービス
(介護予防)訪問看護 (介護予防)訪問リハビリテーション
(介護予防)居宅療養管理指導 (介護予防)通所リハビリテーション
(介護予防)短期入所療養介護
地域密着型サービス
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 看護・小規模多機能型居宅介護

 ただし、⑥定期巡回・随時対応型訪問介護看護については、一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限り、医療費控除の対象です。
 また、⑦看護・小規模多機能型居宅介護については、生活援助中心型の訪問介護部分を除き、①~⑥の居宅サービスを含む組合せで提供したものに限り、医療費控除の対象です。

 

医療系サービスとの併用で医療費控除の対象となる介護保険サービス(居宅系)

 上記の医療系サービス以外の介護保険サービスであっても、看護・医学的管理の下における療養上の世話などに相当する部分の利用者負担は、医療費控除の対象です。
 注意する点は、あくまでも医療系サービスと併用でサービスを提供した場合に限る、ということです。
*「医療系サービスと併せて」とは、1カ月単位のケアプランに医療系サービスが位置付けられている場合を指します。具体的には、居宅介護支援事業者などが交付する『サービス利用票』に医療系サービスが記載されているかどうかで、医療費控除の対象かを判断する

 医療系サービスとの併用で医療費控除の対象となる介護保険サービス(居宅系)は、以下の通りです。

居宅サービス
訪問介護(生活援助中心型を除く) (介護予防)訪問入浴介護
通所介護 (介護予防)短期入所生活介護
地域密着型サービス
夜間対応型訪問介護 地域密着型通所介護
(介護予防)認知症対応型通所介護 (介護予防)小規模多機能型居宅介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護

看護・小規模多機能型居宅介護

(生活援助中心型の訪問介護部分を除く)
地域支援事業:総合事業

訪問型サービス
(生活援助中心のサービスを除く)

通所型サービス
(生活援助中心のサービスを除く)

 ただし、⑨定期巡回・随時対応型訪問介護看護については、一体型事業所で訪問看護を利用しない場合および連携型事業所に限り、医療費控除の対象です。
 また、⑩看護・小規模多機能型居宅介護は、前項の医療費控除の対象となる居宅サービスを含まない組合せにより提供されるものに限り、医療費控除の対象です。

 

介護福祉士による喀痰吸引等が行われた場合の医療費控除

 介護福祉士などによる喀痰吸引等が行われ場合も医療費控除の対象です。
 対象要件は、以下の2点です。

(1)

医療系サービスと併用しない介護保険サービス(居宅系)、または、医療費控除の対象外の介護保険サービス(居宅系)を提供している

(2) 居宅サービス等を提供中に介護福祉士などによって喀痰吸引などが行われる

 対象額は、自己負担額の10分の1に相当する金額が医療費控除の対象です。

*国税庁:介護保険制度下での居宅サービス等の対価に係る医療費控除等の取扱いについて(別添2)

 なお、居宅サービス・地域密着型サービスの介護事業者が発行する領収証に、どのような事項が記載されていればよいか、国税庁の質疑応答に記載されています。
 また、厚生労働省で領収証のひな形がありますが、①「居宅サービス計画を作成した介護支援事業者名」②「医療費控除の対象となる金額」が記載されていれば問題はありません。

*国税庁:質疑応答(領収証の記載事項等)
*厚生労働省:介護保険制度下での居宅サービス等の対価に係る医療費控除等の取扱いについて(領収証のひな形)

 

医療費控除対象の施設サービス

 

・医療費控除の対象:施設サービス編

  介護保険制度における施設サービスでも、医療費控除の対象となる費用があります。
 医療費控除の対象となる費用は「介護費」「食費」「居住費」3つです。これらは、施設サービスによって、医療費控除の割合が異なります。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・地域密着型介護老人福祉施設
介護費  自己負担分の2分の1
食費  自己負担分の2分の1
居住費  自己負担分の2分の1

 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・地域密着型介護老人福祉施設は、所得法「病院」または「診療所」に準ずる施設と位置付けられています。
 これらの施設サービスのうち、療養上の世話などに相当する部分が医療費控除の対象とされています。
*参照:介護保険制度下での指定介護老人福祉施設の施設サービス対価に係る医療費控除の扱いについて(照会)

介護老人保健施設・介護医療院
介護費  自己負担分の全額
食費  自己負担分の全額
居住費  自己負担分の全額

 介護老人保健施設・介護医療院は、医療法に定める「病院」または「診療所」ではありません。
 しかし、医療法以外の規定では、原則として「病院」または「診療所」に含まれる、とされています。
 したがって、これらの施設サービスは全額が医療費控除の対象とされています。

 領収証の記載については、医療費控除の対象額が明らかになるよう、介護費・食費・居住費に係る自己負担を区分ごとに、その金額を記載します。
 また、可能な限り利用者の利便に役立つよう、医療費控除の合計対象額を記載するように努めることが厚生労働省の通知で通達されています。
*参照:介護保険制度下での介護サービスの対価にかかる医療費控除の取扱いに係る留意点について 3(2)・4(2)領収証の記載

医療費控除における介護事業者の領収証

 

 医療費控除を受けるためには、介護保険サービスの利用者側で確定申告する必要があります。

 介護保険サービス事業者は、その確定申告に必要な領収証厚生労働省や国税庁などが示す形で記載しなければいけません。そのため、提供する介護保険サービスが医療費控除の対象であるかどうかを知っておく必要があります。

 実際にあった例を1つご紹介します。
 そのクライアントは、特別養護老人ホームで施設サービスと短期入所生活介護サービスを提供しておりました。
 この場合、特別養護老人ホームの利用者と短期入所生活介護の利用者とでは、医療費控除の対象サービスも金額も異なります。つまり、1つの介護事業所で2種類の領収証を作成する……というイメージです。

 税務署は、介護保険サービスに精通しているわけではありません。
 領収証の特別養護老人ホームの名称を見て、短期入所生活介護の利用者に「自己負担の2分の1が医療費控除になるのではないか?」と伝えてしまい、利用者からクライアントへ問い合わせがありました。

 介護事業者のみなさまは、このような問い合わせに正しく答えられますか?

 弊社北日本ケアサポートは、介護保険(レセプト業務)の国保連請求を代行する会社ですが、利用者への請求書・領収証の作成作業も承っております。北日本ケアサポートは、介護の仕事に専念できるよう、お客様のニーズに合わせて代行のお仕事を自由にカスタマイズしていただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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《 記事原案者 》
鷲尾 和巳 鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶
北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者
《 記事加筆編集者 》
北日本ケアサポートスタッフ 北日本ケアサポートスタッフ:A
介護事務管理士 資格保持者