他事業所の失敗から学ぶ。就労継続支援B型の運営を成功させるヒント
こんにちは! 北日本ケアサポートです。
前回は、就労継続支援B型を運営するにあたり、実際に起こった失敗例を立地と送迎に絞ってご紹介しました。
*前回:就労継続支援B型事業所の運営で起こった失敗の実例―立地と送迎編
今回は『 利用者の確保 』について、お伝えしていきます。
失敗例と題していますが、どちらかといえば、私、鷲尾が代表を務める就労継続支援B型事業所でどのように利用者を確保しているか? という内容が中心です。
*本記事内では「障害」の文字が混在しますが、法令または行政サイトの表記をそのまま使っております
・新規契約の目標数は1カ月2名程度
新規契約の目標数を1カ月2名程度の新規契約と設定すると、退所がなければ1年で24名の増員、15カ月で30名の利用者と契約する計算になります。
定員20名の事業所であれば、順調にいけば1年で上限に近い利用者人数になっているはずです。
詳しくは後述しますが、24名の利用者登録があり、1日平均15名くらいの利用者が通所すると、就労継続支援B型の事業所として損益分岐点に到達できるかと思います。
まぁ……そう単純にはいかないため、利用者の獲得に苦労するのですが(苦笑)
今現在、街を見渡せば、就労継続支援B型の事業所をよく目にします。
これは、法改正などにより就労継続支援A型の運営が厳しくなり、就労継続支援B型に鞍替えしている事業所が多いことも一因です。
利用者側からすれば事業所を選びやすい環境であり、事業所側からすると取捨選択されやすい環境です。
利用者に選ばれる事業所となるには、ほかの事業所がやっていないことや利用者が求めるニーズをしっかり把握する必要があります。
・就労継続支援B型に求められていることは何か?
基本的なことになりますが、就労継続支援B型はどのような障がい福祉サービスでしょう?
厚生労働省では、就労継続支援B型についての概要を以下のように説明しています。
通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち通常の事業所に雇用されていた障害者であってその年齢、心身の状態その他の事情により引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行います。 |
厚生労働省:障害福祉サービスについて より引用 |
冒頭の『 通常の事業所に雇用されることが困難 』とは、基本的に就労継続支援A型の事業所を指します。
つまり、就労継続支援B型の役割は、直接雇用の形態をとる就労継続支援A型へ移行する前段階の訓練的な要素が多い支援をする場と言えます。
また、就労継続支援B型を利用しようとする人も、一般就職を意識するところまで到達していない人が多いのです。
この認識を間違えるとニーズのミスマッチが起こり、利用者の確保に苦戦します。
・実例:就労継続支援B型でのフロー(作業の流れ)
私が代表を務める就労継続支援B型(就労継続支援れのあ)では、春巻き専門店で店舗運営にかかわる作業を利用者が行っています。
その事業所では、最初から厨房や店舗に立ちたいと希望する利用者は少ないのです。
そこで、以下のようなフローを経て、実践的な作業へ移行してもらっています。
① | チラシ折りやスタンプ押しなどの軽作業 《 目的 》就労継続支援B型事業所へ『 通所する 』という習慣をつけてもらう |
② | 体験として厨房や店舗に立ってもらう 《 目的 》厨房や接客が楽しいという経験をしてもらう |
③ | 利用者の様子を見ながら、実践的な作業へ移行 《 目的 》経験を積み重ね、一般就職を意識できるような環境へ持っていく |
ちなみに……北日本ケアサポートスタッフAは、学生時代にコンビニでのアルバイト経験があり、初めてレジ前に立った日、緊張のあまり逃げ出したくなったことをよく覚えています💦
未経験の作業は、誰にでも相当なストレスがかかります。『初心忘るべからず』という言葉があるように、初めてのことに取り組む際の自分の未熟さ、つたなかったときのことを思い出し、未経験者も同じ思いがあることを忘れずに接したいですね。
・利用者が集まらない失敗例
簡単に言えば、上記の真逆です(笑)
具体的には、納期と質を求められる仕事しかない就労継続支援B型事業所は、利用者の確保が難しくなります。
事業所としては、外部からの売り上げをもらえるしっかりとしたビジネスを確保し、利用者がその作業を経験することで一般就職につながっていけば良いと思うかもしれません。
ですが上記でお伝えした通り、就労継続支援B型の利用者は、一般企業に就職したい意識の前段階にいる人が多いのです。
そのため、訓練的な作業フローがなく、実践的な仕事や場所しかない就労継続支援B型事業所は、利用者の確保が難しくなります。
・介護、障がい福祉サービスは『 ストックビジネス 』
介護・障がい福祉事業全般に言えることですが、この仕事はいわるゆ『 ストックビジネス 』です。
ストックビジネスとは、長期利用を前提としたサービスの提供で、継続的に収益を得るビジネスモデルを指します。
ストックビジネスの場合、損失分岐点に到達するまでが一番つらい期間です。
私、鷲尾は、コンサルティングでさまざまな事業所の経費を見てきました。
その経験から感じたことは、24名の利用者登録があり、1日平均15名くらいの利用者が通所すると、就労継続支援B型の事業所として損益分岐点に到達できるということです。
しかし、この目標がうまく達成できたとしても、黒字になるのは1年後です。逆にいえば、1年間は赤字が続くと考えるべきです。
そこで、就労継続支援B型を立ち上げる際には、以下の2点を考えることが重要です。
① | 損益分岐点に到達する時間をどれだけ要するのか? |
② | 黒字に転ずるまでのキャッシュアウト(=企業の現金が流出すること)に対応する金額を、しっかり計画する |
もしも、半年くらい赤字が続くと事業を継続できない程度の体力しか確保できないのであれば、最初からやらないほうが良いと思います。
事実、損益分岐点の到達まで我慢できず、廃業してしまう事業所が多い、と私は感じました。
いかがでしたか? 就労継続支援B型の運営実態が少し見えてきたかと思います。
理想を掲げて事業所を立ち上げても、利用者とニーズが合わずに廃業してしまうのは、とてももったいない気がします。
では、就労継続支援B型の事業所を運営するにあたり、どのような作業を用意し、どのような周知活動していけば良いのでしょうか?
これらに関しては、個々の事業所の特徴や設備、スタッフの特性を考える必要があります。
弊社北日本ケアサポートは、介護事業所や障がい福祉事業所の介護報酬(介護レセプト)の請求事務を代行する会社ですが、コンサルティングも行っています。
文中でもお伝えしましたが、弊社は実際に就労継続支援事業所を運営しています。その経験を基に、事業の成長を幅広くサポートできることが最大の特徴ともいえます。
介護・障がい福祉事業所の運営にかかわる悩みがあれば、ぜひ気軽にお問い合わせください。
《 過去の関連記事 》
・介護事業所のコンサルティングとは? 具体的にどのようなことが頼める?
・介護事業所のコンサルティングとは? オーダーメイドの実例を紹介します
*タイトルは介護事業所となっておりますが、障がい福祉サービス事業所も同様です
《 記事原案者 》 | |
鷲尾 和巳(わしお かずみ) → 代表ご挨拶 北日本ケアサポート 株式会社 代表取締役 / 特定非営利活動法人 はなうた 理事長 / 一般社団法人 日本介護協会 理事 / 介護事務管理士 資格保持者 |
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《 記事加筆編集者 》 | |
北日本ケアサポートスタッフ:A 介護事務管理士 資格保持者 |