利用者や家族は介護に何を望んでいるのですか?

介護の希望は、本人と家族で若干異なります。

 介護保険制度では、利用者のニーズなどを受けて、新たなサービスが創設されますが、では利用者本人あるいはその家族は何を望んでいるのでしょう。

 厚生労働省が行ったアンケート調査によれば、利用者本人の希望と家族の希望は若干異なっています。本人では「家族に依存せずに自宅で外部の介護サービスを受ける」ことうぉんぞむ人が多いのに対して、家族では「家族と外部の介護サービスを組み合わせて受ける」ことを望む人が多くなっています。また本人のほうが、有料老人ホームでの介護を望む割合が明らかに高くなっています。これは、家族に迷惑を掛けたくないという気持ちからなのでしょう。

 

 

日本では、施設への依存率が高くなっています。

 実際に、現在の日本の高齢者介護は、施設のサービスに頼る傾向が強くなっています。少し前の調査ですが、要介護高齢者の死亡場所を先進国で比較したデータによれば、スウェーデンやフランスなどでは3割以上が自宅で亡くなっているのに対して、日本では15%を切っています。

 確かに、24時間随時必要な介護サービスが受けられる施設は、居宅よりもサービス体制が手厚いのですが、それが必ずしも利用者の幸せにつながるわけではありません。そのため厚生労働省は、高齢者が住み慣れた地域で最後まで住み続けられるための施策、高齢者の介護予防を図るための施策を充実させているのです。

 

住み慣れた地域で自立して生活するには何が必要ですか?

地域包括ケアシステムの構築が必要になります。

 介護が必要な高齢者が住み慣れた地域で最後まで住み続けられるようにするため、国が構築を急いでいるのが地域包括ケアシステムです。地域包括ケアシステムでは、医療、介護、介護予防、生活支援、住まいの5つのサービスが一体的に受けられます。

 国は、約800万人の団塊の世代が75歳になる2025年までに、市町村主体で地域の実情に合わせた地域包括ケアシステムを構築したいと考えています。そしてそのためには、「自助=高齢者自らができることを行う」「互助=ボランティアや近所の人などに助けてもらう」「共助=介護保険や医療保険サービスを利用する」「公助=社会福祉制度を利用する」を組み合わせることが必要になるのです。

 

地域ケア会議の設置・運営が義務化されました

 2012年に導入され、2015年度に設置・運営が義務化された地域ケア会議は、地域包括ケアシステムの構築のために地域の課題と資源を把握し、実情を踏まえた解決手段を導き出すための会議です。会議には介護・福祉・医療などの様々な職種の関係者が参加し、ケアプランの検討やケアマネジャーへの助言といった①個別課題の解決、地域関係者の②ネットアーク構築、③地域課題の把握、関係機関の役割分担や地域ボランティアの活用などの④地域づくり・資源開発、地域に応じたサービス開発や国・都道府県への提案などの⑤政策形成などが検討されます。①と②は地域ケア個別会議で、③~⑤は地域ケア推進会議で検討されることになります。